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駐在員レポート
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季刊誌SIBA(静岡県国際経済振興会)
シンガポールにおけるITビジネス

【2000年10月】
                                            岩城徹雄駐在員
1 シンガポールのITの現状
 シンガポールでは、1992年に国家的IT政策として発表された「IT2000計画」に続き、2001年から2010年にかけての期間で、同国をインテリジェント・アイランド化し、アジア太平洋地域における情報通信ハブとして発展させようとする「Infocomm21」という計画を策定している。この計画の基本戦略としては、通信分野の自由化、人材育成、ドットコム企業の強化育成、外資との提携による国内企業の育成、双方向広帯域マルチメディア産業の増強などが挙げられている。2005年までに情報通信産業の年間売上高を400億シンガポールドル(約2兆5000億円)にするなど、具体的な数値目標も設定されている。
 また、2000年7月には、情報通信開発庁から「情報技術ロードマップ」計画が発表され、2005年までに国内のすべてのビルの25%(ほとんどの商業ビルがカバーされる)に高速・広帯域の光ファイバーを整備するなど、学校、家庭も高速通信網でつなげるインフラ整備を進めることとしており、現在政府、民間企業等国を挙げてインテリジェント・アイランドの実現に取り組んでいる状況である。
 このような政府のIT推進策が効を奏し、一般家庭へのコンピュータの普及率は1999年の国家統計局の調査で58.9%、また、家庭におけるインターネット接続比率は42.1%と、大変高い。また、シンガポールは、インターネット接続インフラの整備状況などの評価による世界のEビジネスのランキングで、アジアで最高の8位となっており(イギリス「エコノミスト」誌の調査機関の調査)、世界でもトップクラスのIT利用国との評価が高い国である。

2 シンガポールの電子商取引(Eコマース)
 (1)政府の取り組み
 シンガポールの電子商取引に対する取り組みは早く、1997年1月には関係省庁からなる電子商取引政策委員会が組織され、98年4月には「電子商取引の政策枠組み」が発表されている。これは、民間主導の電子商取引、政府による安全確実な環境や関連法の整備などからなる電子商取引の原則とその促進のための政策提言の2つからなっており、電子商取引法の制定(98年7月公布)をはじめ公共サービスの電子化や電子支払いサービスなどのインフラ整備などが具体化しつつある。

 (2)電子商取引の現状と課題
 (ア)企業・消費者間
 シンガポールにおいては、BtoC(企業・消費者間電子商取引)は、アメリカなどと比較した場合、今のところそれほど盛んには行われていない。これは、国が小さいので実際にショッピング街に足を運び品物を手にとって買い物を楽しむ頻度が高く、ネットワークを活用したショッピングの利点を活用しにくいこと、また、インターネットを通じての購入の安全性に疑問を持つ人が多いことなどによるものであると言われている。
 民間の調査機関によると、シンガポールのインターネット利用者に人気があるウェッブサイトはヤフー社、マイクロソフト社のアメリカ系二社に続き、シンガポールのインターネット・サービス・プロバイダー企業のパシフィックネット社が提供するpacfusion.comが三位に入っている。このウェブサイト(www2.pacfusion.com.sg/)では、最初のページに消費者向けのさまざまな商品の購入などができるリンクを充実させているが、実際の利用はまだこれからのようである。
 家庭におけるインターネットの利用率が高いことは前述のとおりであるが、利用目的の第一はEメールであり、インターネット利用者の約9割がメールによるコミュニケーションを活用している一方で、オンラインショッピングは実際に購入しなかった人も含めてインターネット利用者の11%が経験しているにとどまっている。
 消費者向けのITビジネスとして今後脚光を浴びそうなのは、携帯情報端末によるモバイル商取引(Mコマース)である。シンガポールの携帯電話普及率は2000年4月で約54%(情報通信開発庁調べ)であり、今後は、インターネット接続機能付き携帯端末が一層増えていくという予想のもと、Mコマース市場の急速な拡大が期待されている。

 (イ)企業間
 BtoB(企業間電子商取引)では、シンガポールの全企業の約9%がインターネットを利用しての商品売買を始めている。現在、BtoB電子商取引はおよそ二億シンガポールドル(約120億円)程度であるが、政府では今後5年間でシンガポールでのビジネス活動の半分以上を電子商取引とし、商品・サービスの取引が40億シンガポールドル(約2500億円)になることを目標としている。企業では最新技術の利用等による企業イメージの向上や事業の国際化、コストダウン、売り上げ増を期待して積極的にEコマースに参入しており、BtoB取引も急速に拡大している。しかし、中小企業の参入が遅れているため、政府では製造業、小売業、貿易業、金融業など各分野での企業向けポータルサイトの開発・開設を促すほか、Eコマース導入を計画する企業が外部コンサルタントに作業を委託する場合の費用の一部を援助するなど、企業のEコマースの拡大を支援する策を打ち出している。
 シンガポール政府ではネット関連企業の育成にも力を注いでおり、税の優遇やR&Dに対する助成金、ベンチャーファンドなどの支援を行っている。このような政府の支援を受けた、起業家精神に富んだ人たちを中心に新規にネット事業が創設されている。シンガポールで創業された代表的なネット企業では、ホライゾン社(www.horizon.com.sg/)、ベックス社(www.sa.bexcom.com)、シルクルート社(singapore.cnet.com/)などがあげられ、それぞれ電子商取引関係のウェブサイトを運営している。
 しかし、人口300万人のシンガポールだけではITビジネスは成り立たず、ネット関連企業の課題は、いかに世界に通用するビジネスを構築するかにあるといわれている。日本、韓国、中国をはじめとするアジア地域や世界の市場を視野に入れた展開が求められている。

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