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駐在員レポート
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SIR(静岡県国際交流協会)
自立の担い手はNGO

【1999年6月】
                                            篠原清志駐在員
−前説−
 シンガポール生活も3年目を迎え、
 充実した毎日を送っています。

 
 昨年末、バングラデシュを訪れました。夜遅くダッカ国際空港に着き、市内のホテルまで向かう車は、赤信号も無視して猛スピードで走ります。道には街灯もほとんどなくて辺りは真っ暗、時々車のヘッドライトに人影が浮かびますが、暗黒の中いったい何をしているのか、アジアのいろいろな国を訪れていますが、ここは最も危険な国かもしれないと、それが第一印象でした。
 翌日の朝ホテルを出ると、一種異様な臭いとクラクションの喧騒が待っていました。身の危険を感じることはありませんでしたが、世界の中でも最も貧しい国の一つなのだと実感することばかりでした。人間も動物も太っているものはほとんどいません。道端に棄てられたゴミも、最初に大人が来て、次ぎに子供が来て、牛が来て、犬が来て、最後にカラスなどの鳥が来て、棄てられたゴミはいつの間にかきれいに片付けられているといいます。子供たちも小学校を卒業できるのは全体の3分の1にもみたず、10歳を超えると、女の子は口減らしと労働力提供の意味から結婚させられ、男の子は「リキシャ」(自転車で引く人力車のようなもの)を漕いでその日の生活費を稼がなければならない子もかなりの数に上るといわれています。
 この国は、社会開発活動を行うNGOにとっての実験場と言われ、世界中からNGOやボランティアが来て力を注いでいます。日本からもシャプラニール(注1)やオイスカ(注2)などのNGOが頑張っていますが、資金が十分でないことや、バングラデシュの人々の価値観や社会制度の壁―例えば、女性は動きにくくても民族衣装のサリーを着て農作業をすることや、相続では子供は完全均等相続で、さらに子沢山のため、技術指導をしても、それを生かして収益をあげるための農地の集積ができないないことなど―にぶつかって思うようにいかないことも多いようです。
 一方、バングラデシュで生まれたNGOでは、農村開発で大きな成果を収めている小規模金融のグラミン・バンクが有名ですが、首都ダッカでは、ブラック(BRAC:バングラデシュ農村振興団)が大きな存在感をもっています。市の中心部に威容を誇る20階建てのビルを構え、スタッフは一万人を擁し、第二の政府と言われる存在です。NGOについて、日本で一般的に考えられているような、志が高い人たちが、寄付などの浄財を使って献身的に活動するというのではなくて、一種の企業体です。農村部で技術指導を行い、それによって製作された衣料品や工芸品、ミルクなどをダッカなどの都市部で富裕層や外国人に売り、得た収益で各地に数千校にも上る学校を建てています。訪れることができたダッカの販売店は、良質な商品がきれいに並べられ、店内も明るく、店の外とは別世界という感じで、ワンフロアーながら高級デパートのような印象を受けました。
 NGOも財源が確保されなければ何もできません。BRACについては、営利団体だとの批判的な声も聞こえましたが、貧しい人々を自立させていくために、人々に働くための技術と仕事を与え、その成果を人々に還元することはもちろん、学校を建てて次代を担う子供を教育していくという、このNGOの意思と具体的な行動を目の前にすると、ただ単に、お金や物資を援助するだけでは何も解決しないのだと、その国の人々が自立していくための支援こそが重要なことなのだと改めて強く感じました。

(注1)シャプラニール:バングラデシュとネパールで貧しい農民のための支援活動を行っているNGO。
(注2)オイスカ:教育・開発・環境に重点を置き、長期的な視点から南北問題や環境問題に取り組んでいるNGO。


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